記憶になければ、その人にとって事実ではないこと
物忘れがひどくなって同じことを繰り返したり、家族の顔や自分の家が分からなくなる…
そんなことが、身内で起ったとき、誰であっても、
「そのことをどう理解したら良いのか。」
「どう対応したら良いのか。」
混乱し動揺することは必至です。
そんな時のために、心得ておきたいポイントを理解し、
備えてまいりましょう。
1.ひどい物忘れ(記銘力低下)
記銘力とは:見たこと、聞いたこと、体験したことを直ぐに思いだせる力
認知症が始まると、先ずこの記銘力の低下が顕著に見られます。 つまり、ひどい物忘れが起り始めるのです。 同じことを何十回、
ときには何百回と繰り返します。
しかし、物忘れのために同じ事を繰り返すのは、認知症の人ばかりではありません。
外出時に、カギをかけた次の瞬間に、本当にカギがかかっているかを確認します。
気になることを確認するため、繰り返す行為は人間の本性なのです。
認知症の人だけが異常であると考えないことが大切です。
2.全体記憶の障害
出来事全部をスッポリと忘れてしまう
私たちの記憶はとてもはかなく、重要でない事柄のほとんどは記憶にとどめることができません。 認知症が始まると、自身が体験した全体の出来事をスッポリと忘れるようになります。 このとき、私たちは否定や嫌悪感をもって対処するのではなく、
当事者を認めたうえで行動を促していくことが肝要になります。
3.記憶の逆行性喪失
その人の現在は、最後に残った記憶
蓄積されたこれまでの記憶が、現在から過去にさかのぼって失われていく現象をいいます。 つまり、その人にとって最後に記憶が残っているところが、現在の時点になっています。 仮に、30才の記憶が最後に残っていた場合は、当事者の30才に戻った行動が見られるのです。 また、幻覚・妄想と呼ばれる症状も、認知症の人の体験や思考の、断片的な世界と捕えると、 決して異常な世界ではなくなります。性的異常行動もこのことを理解しておくと、異常とは思えなくなります。
認知症の人の気持ちや置かれている世界を理解することは、とても大切なことです。